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表裏

Arabia / Moomin マグ Moominvalley

ムーミンマグはもう増やすまい。そう心に決めている人でも、スルーするわけにはいかないのが今回の「Moominvalley」マグ。
スペシャルなポイントは数々あれど、まずはこの佇まい、風合いをとくとご覧あれ! ぽんと置いておくだけでアート作品を飾っているかのような存在感。トーベ・ヤンソンの繊細な水彩画をぎゅっと小さく、カイ・フランクがデザインしたシンプルで洗練されたフォルムのティーママグに乗せることによって、ポストカードや本の表紙を飾る以上に原画の魅力が強く伝わってくるような気さえする。
今までにない豊かで深い色あいは、通常のアラビアムーミンマグは多くても10色程度のところ、27もの色数を用いることによって実現したもの。また、マグに使われている絵は1968年出版の『たのしいムーミン一家』のフランス版『Moumine le Troll』の表紙に使われた水彩画で、印刷や複製画ではなく原画をそのままアラビアに持ち込むという前代未聞の方法で製品化されたという。

そんな贅沢が許されたのは、このマグがふたつの大きな出来事を記念して作られたものだからだ。ひとつめは、2017年6月、タンペレ市の観光名所だったムーミン谷博物館がタンペレホール内に移転、ムーミン美術館として生まれ変わったこと。さらに、2017年はフィンランド独立100周年という大きな節目の年。タンペレ市立美術館と、フィンランドが世界に誇るブランド、アラビアとのコラボレーションという形で、この「Moominvalley」マグは誕生した。たくさんの原画のなかから候補が絞られ、最終的に『たのしいムーミン一家』の表紙が選ばれたのは、フィンランド独立100周年のテーマ「Together」にぴったり!という理由だった。

Arabia (アラビア) / Moomin (ムーミン) マグ Moominvalley

ここで、『たのしいムーミン一家』のストーリーについて、少し紹介しておこう。ムーミン童話シリーズの第2作にあたる同作は、大人も子どもも楽しめるファンタジーの名作として世界中で愛読されている。1990年に日本で新たに作られたアニメのタイトルも『楽しいムーミン一家』だ。
気持ちよく晴れた春の日、冬眠から目覚めたムーミントロールとスナフキン、スニフは山のてっぺんで黒いシルクハットを発見。実はそれは飛行おにと呼ばれる魔法つかいが落としたもので、物の形を変えてしまう不思議な力を持っていた。ぼうしのなかに捨てた卵の殻は雲に、川の水は木いちごジュースに、つる草は生い茂る熱帯の植物に。楽しい出来事が次々と起こるムーミン谷に、ある日、大きなスーツケースを抱えたトフスランとビフスランがやってくる。ふたりが隠し持っていたのは、飛行おにがずっと探し続けている大きな大きなルビーの王さま。そのルビーを追って、怖い魔物のモランや飛行おにもムーミン谷へ……。

「Moominvalley」マグ=表紙には、アコーディオンを弾くムーミンパパ、木々の間を歩くムーミンママ、仲良く雲に乗るムーミントロールとスノークメイデン(スノークのおじょうさん)、木の上で横笛を吹くスナフキン、スニフ、ヘムレンさん、トフスランとビフスラン、木の後ろに佇むモラン、ニョロニョロ、アラビアマグに待望の初登場となる飛行おにと黒ひょう、そして名もないムーミン谷の住人まで、たくさんの仲間たちの姿が描かれている。
ルビーの所有権をめぐるいざこざも、飛行おにの魔法の力とトフスランとビフスランの思いやりで丸く収まってハッピーエンド。この絵から伝わってくるのは、まさに「Together=一緒に」という気持ち。そんな背景を知ると、特別なマグがますます特別なものに感じられるのではないだろうか。

この『たのしいムーミン一家』表紙原画を含め、数々の貴重な作品を見ることができるムーミン美術館は6月に新規開館したばかり。タンペレとムーミンの縁は、1986年、トーベ・ヤンソンがタンペレ市に2000点もの原画や立体作品、下絵や資料などを寄贈したことにさかのぼる。当時、寄贈の条件としてトーベが望んだのは、原画をしまい込むのではなく、常時展示してほしい、ということだったといわれている。1987年、タンペレ市立中央図書館の地下スペースにムーミン谷博物館がオープン。その後、いったんタンペレ市立美術館の一角に移り、最終的にコンサート会場や会議場などのあるタンペレホール内に落ち着く運びとなった。

新しいムーミン美術館は、常設展と企画展からなり、トーベ・ヤンソンの原画約400点と、トーベのパートナーでグラフィックアーティストのトゥーリッキ・ピエティラが手がけた立体作品約30点を間近に見ることができる。館内は美術品保護の観点から撮影NGだが、いまどきの体感型美術館らしくフォトスポットやスマホを使った解説、世界中の言葉に翻訳されたムーミン童話を揃えた図書スペースなど、一日いても飽きないほど充実した内容だという。また、ムーミン谷博物館の前に立っていたシンボルともいうべきムーミンのブロンズ像は、タンペレホールに隣接するソルサ公園の一角に移され、以前にも増して多くの市民や観光客から親しまれているようだ。

Arabia (アラビア) / Moomin (ムーミン) マグ Moominvalley

「Moominvalley」マグに話を戻すと、ムーミンだけでなくアラビアや北欧食器が好きな方にもぜひ注目してほしい特別な趣向がマグの底にも! 通常のアラビアムーミンマグは、筆を持ったムーミントロールの後ろ姿のバックスタンプで統一されている。数少ない例外が、400個限定の幻の「Fazer Cafe」と、ムーミン65周年記念の「Night Sailing」、トーベ生誕100周年記念の「Tove's Jubilee」。「Fazer Cafe」にはアラビアのロゴはあるがムーミンの絵はなく、代わりにシリアルナンバーが刻まれている。「Night Sailing」(写真右)には『ムーミン谷の彗星』の挿絵をアレンジした絵と65という数字、「Tove's Jubilee」(写真上)にはトーベ100のシンボルマークだった小さなはい虫の女の子の絵とロゴ、2005年にフィンランドのアラビアミュージアムで「Moomins at Arabia展」が開催されたことを記念して2005個限定で作られた「Daydreaming」(写真左)は通常の絵筆ムーミンだが、フチにぐるっとマグの名前が英語、スウェーデン語、フィンランド語の3カ国語で入っている。

今回の「Moominvalley」(写真下)のバックスタンプに採用された見返りムーミン、これは小説『ムーミン谷の冬』の挿絵をアレンジしたもので、ムーミン美術館のポストから郵便物を投函したときに押される消印などにも使われているカットだ。
余談だが、ムーミン以外のアラビア製品のバックスタンプは、1949年から2014年まではマイナーチェンジしつつもARABIAの文字と王冠マーク(本当は王冠ではなく、焼き窯の上の部分をひっくり返したデザイン)だった。2014年から「ARABIA 1873」に変わり、それにともなってムーミンマグのバックスタンプも変更。「Daydreaming」に入っているのが旧アラビアロゴで、「Moominvalley」マグのARABIAの文字が新ロゴ。最近は夏マグ冬マグなど、期間限定生産のマグには年号が入るようになった。
なお、現在、通常のティーママグはアラビアからイッタラブランドになったため、 ARABIAではなくiittalaのバックスタンプが押されている。

アラビアムーミンマグについてさらに語らせていただくと、最初に作られた1990年から、1991年の産休期間とストックマンなどの企業発注マグを除いて、デザイナーのトーベ・スロッテがトーベ・ヤンソンの絵を元にデザインを手がけている。たとえば「Tove's Jubilee」は「Moominvalley」同様、一枚絵の構図だが、スロッテが手描きでマグのために絵を再構築したもので、フィリフヨンカとミムラが他のカットと差し替えられていたり、元の絵には不在のスナフキンが追加されていたり、さらにキャラクターが黒い線でくっきり描かれているため、絵本『ムーミン谷へのふしぎな旅』の元絵とはかなり印象が異なる。絶妙な色みが大人気だった「Night Sailing」の場合、スロッテがコミックスと小説の絵を組み合わせて、ヤンソンの絵を生かしつつも原作にはない場面を作り出した。原画そのままに思える「Hurray!」や「Daydreaming」も、実は絵が反転していたり、部分的にリピートしていたり、マグのフォルムにしっくり納まるように絵を配置し直している。2017年の夏マグ「Summer Theater」は、白黒の挿絵に色をつけ、ポップに仕上げたスロッテの手腕が光る。
つまり、原画のままというのが必ずしも最上というわけでもないのだが、「Moominvalley」が新鮮に感じられるのは、マグの曲線に合わせる調整のみで描き直しをしていない、今までにないパターンで作られたものだから。「Moominvalley」に限っていえば、その試みは大成功といえるだろう。

ムーミンを観光の目玉と推すタンペレ市が全面的に協力したこのマグ、市の記念品として配られたりもしているらしい。アラビアも、ムーミン製品ではあまり前例のないプレス発表会を実施。発売前から大きな話題を呼び、5月9日、ムーミン美術館のミュージアムショップで先行販売されたときには、少し待てば他のアラビア/イッタラショップや国外でも購入できるにも関わらず、フィンランドには珍しく長い行列ができた。
これでもかというぐらいスペシャル尽くしの「Moominvalley」マグは2017年いっぱいの生産なので、日本でも普通に買えるうちに押さえておくが吉。しかも、このクオリティのわりには4,000円という、特別すぎて手が届かないなんてことのない、良心的なお値段。買って後悔することはないと断言できるので、ぜひ実物を手に取ってみてほしい。

text:萩原まみ(ライター)

Arabia (アラビア)
Kaj Franck (カイ・フランク)
Tove Jansson (トーベ・ヤンソン)

材質 磁器
サイズ 約φ80×W109×H80mm 250ml
生産 Made in Thailand
備考

ベース:Teemaマグ

オーブン
(直火不可)
フリーザー 電子レンジ 食器洗浄器
  • 陶磁器製品に共通して見られますが、小さな黒点やピンホール、多少のがたつきはどれにもあり、良品としています。

説明書ダウンロード

Moomin マグ Moominvalley

  • ¥4,000(税抜き)