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個々に生まれた、
ズレ、柄ヌケ、滲みが
人の手の証。転写紙を濡らして、それを立体面に手で刷りこんでいくという印判染付け。転写していく作業の中で、色の濃淡、柄の抜け、滲み、切れ、ズレが生まれます。もちろん使用には問題のない部分なので、表情であり、物の個性であると納得して使っていくと、それが特徴となり、少しづつ愛着が生まれていきます。完全に同じ物が並んでいるような感覚ではなく、個性いっぱいの小学生が集まっているような。同じ学年であっても、みんなに少しづつ違いがあって、誰一人完全に同じ人なんていない。だから楽しい。人の手が作る物だからこそ、個性があり人に近く、温かい。それがあえて印判の染付が選ばれた理由でもあります。現在人気の高い明治の印判皿の魅力の一つも、この不均一な表情なのだと思います。
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今も、昔と同じ手法で
作られています。江戸時代から庶民に愛されてきた、印判の染付。骨董市などに足を運ぶと、500円くらいの物から、数万円の物まで、いろんな印判に出会います。技術の進化のおかげで、大量生産で安く物が作れるようになった近年、印判染付のような手間のかかる物はだんだんと私たちの日常生活から消えていってしまいました。そんな中、今でも印判染付けを製作されている窯元さんがあります。その製作手法は、江戸時代から今まで、ほとんど変わっていません。
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クラウスの印判小皿は光春窯さんで製作。はじめに本焼き前の無地の器を用意。これに転写紙を貼り付けます。
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転写紙を器に載せ指で押さえます。器の立ち上がり部分にシワが寄りやすいため立体物への転写は難しい作業です。
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水をつけた筆で転写紙を濡らして器に貼り付けます。これにより転写紙の柄が器に染付けられます。
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転写紙を剥がして染付け完了。手作業ゆえに滲みや柄切れがでることもしばしば。これも印判ならでは味なんです。
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左が染付け直後の器、右が釉薬をかけ本焼きした器。焼きあがると呉須の青がいっそう鮮やかに。硬く焼き締まって、ひと回り小さくなります。
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こちらは白岳窯さんで手掛けている印判の器。工程は同じで、ひとつひとつ丁寧に作られています。人の手が作るものだからこそ、個性があり人に近く、温かい。それが印判染付けの醍醐味です。